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保温工事の単価は?金額を左右する要因&見積もり時のポイント

保温工事の単価は?金額を左右する要因&見積もり時のポイント

「保温工事の単価って一体いくらなの?」
「見積もりを見ても高いのか安いのか…」

保温工事は専門性が高く、一般的には馴染みの薄い分野のため、多くの方が「どこから手をつければいいのか…」という状況に陥っています。

商業施設、オフィスビル、工場などの配管や設備に施す保温工事は、エネルギー効率の向上と長期的なコスト削減に直結する重要な投資です。そのため、保温工事の単価構造や見積もりの注意点などをしっかり理解しておく必要があります。

この記事では、保温工事の単価に影響する具体的な要因から、見積もり取得時のポイントまで、実務で役立つ情報を詳しく解説していきます。複雑に見える保温工事も、要点を整理すれば必ず理解できるでしょう。

最後まで読めば、安心して保温工事を進められるヒントが見つかるはずです!

保温工事単価の基礎知識を解説

保温工事の単価について

保温工事の単価の仕組みを理解するには、まず公共建築工事で見られる積算資料が1つの参考になります。以下の表は、一般財団法人建築コスト管理システム研究所が公表している資料を一部抜粋したものです。

【保温工事(配管)】

■給水管・排水及び通気管・給湯管・温水管(膨張管含む)(グラスウール保温材)

施工場所材料及び施工順序呼び径
(mm)
厚さ
(mm)
単位
屋内露出(一般居室・廊下)1.保温筒
2.鉄線
3.合成樹脂製カバー1
シートタイプ
(ピン留め施工)
1520m
2020
2520
3220
4020
5020
6520
8020
10025
12525
15025
20040
25040
30040

※出典:一般財団法人建築コスト管理システム研究所|機械設備工事(保温工事)

【保温工事(ダクト)】

■長方形ダクト(ロックウール保温材)

施工場所材料及び施工順序厚さ
(mm)
単位
屋内露出(一般居室,廊下)1.鋲
2.保温板
3.カラー亜鉛鉄板
50
機械室,書庫,倉庫1.鋲
2.アルミガラスクロス化粧保温板
3.アルミガラスクロス粘着テープ
25
屋内隠ぺい,ダクトシャフト内25
多湿箇所
屋外露出
(多湿箇所は、浴室,厨房等を含む
(厨房の天井内は含まない。)。
屋外露出は、バルコニー及び開放廊下を含む。)
1.鋲
2.保温板
3.ポリエチレンフィルム
4.鉄線
5.ステンレス鋼板
50
排煙ダクト 屋内隠ぺい1.鋲
2.アルミガラスクロス化粧保温板
3.アルミガラスクロス粘着テープ
4.きっ甲金網
25

(注) 金属仕上げの場合は、鋼枠なしの単価とします。

※出典:一般財団法人建築コスト管理システム研究所|機械設備工事(保温工事)

※表は一部抜粋です。完全な表は出典元のページ内でご確認ください。

単価表の見方を理解する

この保温工事の表では、右端に単価欄が設けられています。配管工事では「○○円/m」やダクト工事では「○○円/㎡」という具体的な金額が入り、メートル当たりや㎡当たりの工事単価を示します。

配管とダクトで単位が異なるのは、配管が長さを基準とした積算であるのに対し、ダクトは表面積を基準とした積算になるためです。

※ただし、これは公共建築工事での積算方法の1つであり、民間工事では必ずしも類似の方法が使われるとは限りません。

民間の保温工事で参考にする

民間の保温工事では、地域の実勢価格や材料費の変動、施工会社の規模などによって単価が大きく変わる場合があります

そのため、上記の表は保温工事の単価算出における工事内容や材料構成を理解するための参考資料として活用してみて下さい。

実際の見積もりを取る際は、複数の保温工事会社に打診し、工事内容の詳細や使用材料を比較することが重要です。

保温工事の単価を左右する5つの要因

保温工事単価を左右する要因

保温工事の単価は、さまざまな要因によって大きく変動します。予算を正確に把握するためには、単価に影響する主要な要因の理解が重要です。

これから解説する5つの要因を把握しておくことで、より適正な価格での保温工事が実現できるでしょう。

※各解説内の単価はおおよその目安になります。諸条件により変動するため、実際の単価は正式な見積もり時に各社へご確認ください。

保温材の種類と性能グレード

保温工事の単価を最も左右するのが、保温材の種類と性能グレードです。

たとえば、配管径20A・保温厚30mmの保温工事の場合では4,000円/m~5,000円/m程度が目安となります(保温材・外装材・施工費込み)

一方、ロックウールは耐熱性と撥水性に優れており、材料費はグラスウールより1.5~2倍程度高くなる場合があります。

密度によるグレード区分(グラスウールでは10K、16K、24K、32K等)も単価に大きく影響し、数値が高いほど断熱性能と価格が上がる傾向です。用途に応じた材料の選択が、保温工事の費用を決める重要な要素となるでしょう。

工事規模(配管径・面積・長さ)

配管径が大きくなるほど必要な保温材の量が増加し、4,500円/m~7,000円/mほどの範囲で、管径20Aでは目安4,500円/m前後、管径80Aでは目安7,000円/m前後と配管径に応じて単価が上昇します。

しかし、長距離の配管工事や大規模な施設では、材料の大量調達や作業効率の向上により、1mあたりの単価が下がる傾向です。たとえば500m以上の大規模工事では15~20%程度の単価削減が期待できる場合もあるでしょう。

工場全体の配管保温工事のように規模が大きい場合は、交渉次第でさらなる単価削減の可能性があります。

施工条件(立地・撤去作業・アクセス性)

地上の開放的な場所での新設工事に比べ、地下室や天井裏といった狭い場所では作業効率が下がり、単価の上昇が考えられます。

既設配管の保温更新工事では、古い保温材の撤去・廃棄費用が追加でかかり、撤去作業だけで新設工事の20~30%相当の費用が発生する場合も多いです。

また、高所作業が必要な場合は足場設置費用が発生し、特に10m以上の高さでは通常の1.5~2倍の単価になることもあります。

アスベスト含有の古い保温材撤去が必要な場合は、撤去費用だけで数百万円かかるケースもあるため、事前調査が不可欠でしょう。

保温厚さの違い

一般的な配管保温では25mm、30mm、50mmの厚さが多く使われ、厚さが増すごとに材料費と施工費が上がります。

管径50Aの配管で保温厚30mmの場合は目安5,500~6,000円/mほどですが、保温厚50mmになると1.3~1.5倍程度の単価上昇が見込まれます。

高温配管や冷凍配管では、より厚い保温が必要になり、標準的でない厚さでは特注品となって単価がさらに高くなる場合があるでしょう。

ただ、エネルギー効率を重視する施設では、初期費用は高くても厚い保温材を選択することで、長期的な省エネ効果により投資回収を図るケースも見られます。

特殊仕様(耐熱・防水・防火)

400℃以上の高温配管では、耐熱性に優れたロックウールなどの高性能保温材が必要で、一般的なグラスウールの1.5~2倍の材料費がかかる場合があります。

屋外配管や多湿環境では防水仕様の外装材が必要となり、アルミガラスクロスから金属ラッキングへの変更で、1mあたり目安2,000~5,000円ほどの追加費用が発生する傾向です。

また、防火区画を貫通する配管では、不燃材料かつ防火性能を満たす特殊な保温材と施工方法が求められ、通常の保温工事の3~5倍の単価になることもあります。

食品工場や医薬品工場では、衛生基準に適合した抗菌仕様の保温材が求められ、一般仕様より目安20~30%高い単価設定が一般的です。

以上、保温工事の単価を左右する5つの主要な要因について解説しました。

保温工事の見積もり時のポイント6つ

保温工事の見積もり

保温工事の見積もり取得は、適正価格で品質の高い工事を実現するための重要なステップです。単価だけでなく、施工品質や長期的な信頼性を総合的に判断する必要があります。

ここでは、見積もり時に押さえておくべき6つのポイントをご紹介します。

複数業者から相見積もりを取る

保温工事では、必ず3社以上から相見積もりを取ることが重要です。同じ仕様でも業者によって単価が大きく異なるため、比較することで適正価格を把握できるでしょう。

相見積もりを取る際のポイントは以下の通りです。

  • 同一条件にて見積もり依頼する
  • 見積もり期限を統一して設定する
  • 地元業者と大手業者を組み合わせる

あまりにも安い見積もりは、材料や施工の手抜きの可能性があるため注意が必要です。複数の見積もりを比較することで、妥当な価格帯を見極めることができます。

仕様と施工範囲を明確に指定する

見積もりの精度を高めるためには、仕様と施工範囲をはっきり指定することが不可欠です。曖昧な依頼では業者によって解釈が異なり、適切な比較ができません。

指定すべき項目は以下の通りです。

  • 保温材の種類と性能グレードを明記する
  • 保温厚さと外装材の仕様を詳しく書く
  • 施工対象の配管径と長さを正確に伝える
  • 撤去が必要な既設保温の有無を調べて記載する
  • 作業の時間帯と工期の制約を事前に伝える

図面がある場合は必ず添付し、詳細な依頼書を作成することで、後々のトラブルを防ぎ、正確な見積もり比較が可能になります。

見積書の内訳明細を詳細確認する

見積書は総額だけでなく、内訳明細を詳しく確認することが重要です。どの項目にどれだけの費用がかかっているかを把握することで、適正さを判断できます。

確認すべき内訳項目は以下の通りです。

  • 材料費の内訳を細かくチェックする
  • 施工費の人件費と作業日数を確認する
  • 諸経費と現場管理費の根拠を質問する
  • 撤去費用と廃棄物処理費を分けて確認する
  • 足場設置費や安全対策費の妥当性を判断する

項目が「一式」でまとめられている場合は、詳細な内訳を求めましょう。不明な項目や相場と大きく異なる単価があれば、遠慮なく質問することが大切です。

どの業界もそうですが、最初から透明性の高い見積書を提示する業者ほど、信頼できる傾向があります。

追加費用の可能性を確認する

保温工事では、現地調査で判明する問題により追加費用が発生することがあります。見積もり段階で追加費用の可能性とその対応策を確認しておくことが重要です。

追加費用の発生を防ぐための事前確認事項は以下の通りです。

  • 配管の腐食や損傷リスクを事前に把握する
  • 足場の追加設置が必要な箇所をチェックする
  • 作業条件の変更による影響を事前に相談する
  • 想定以上の撤去作業が必要になる可能性を確認する
  • アスベスト含有保温材の調査を有資格者により事前に行う

追加工事が必要になった場合の単価や対応手続きについて、事前に取り決めておきましょう。口約束ではなく、書面で条件を明確にすることで後々のトラブルを防げます。

業者の施工実績と資格・許可を調べる

保温工事の品質は、施工業者の技術力と経験に大きく左右されます。見積もり検討の際は、業者の施工実績と保有資格を必ず確認しましょう。

確認すべき項目は以下の通りです。

  • 類似建物での施工実績を詳しく聞く
  • 安全管理資格者の配置状況を確認する
  • 保険の加入状況と補償内容を確認する
  • 熱絶縁施工技能士の在籍状況を確認する
  • 熱絶縁工事業の建設業許可通知書の有無を確認する

実績写真や過去の施工事例を見せてもらうことで技術力を判断でき、大型施設での工事経験がある業者は複雑な条件下でも安定した施工が期待できます。

※建設業許可は請負金額500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を行う場合に必要となります。

アフターサービス・保証期間を確認する

保温工事は長期間にわたって性能を維持する必要があるため、アフターサービスと保証内容の確認が不可欠です。工事完了後のトラブルに適切に対応してもらえるかが重要なポイントです。

確認すべき保証内容は以下の通りです。

  • 保温性能の保証期間を明確にしてもらう
  • 定期点検サービスの有無と頻度を確認する
  • 緊急時の連絡体制と対応時間を聞いておく
  • 施工不良による補修対応の範囲を決めておく

保証書の発行や保証範囲の明文化を求めることで、長期的な安心を得られます。アフターサービスが充実している業者は、自社の施工品質に自信を持っている証拠でもあります。

以上、保温工事の見積もり時に重要な6つのポイントをご紹介しました。慎重な業者選定と丁寧な見積もりの検討により、安心して任せられる保温工事の実現を目指してください。

まとめ:保温工事の単価から最適な計画を

保温工事の計画

保温工事の単価を知ることは、実はコスト削減の第一歩に過ぎません。重要なのは「保温工事をしないことによる隠れたコスト」を正確に把握することです。

断熱不足による光熱費への影響、結露による設備の腐食や故障リスク、作業環境の悪化による生産性低下は見逃せません。

また、保温工事を成功させるカギは、単価の理解だけでなく「いつ、どのように進めるか」の計画にあります。設備の規模や配管の長さ、施工箇所によって工期が変わるため、早めの立案が重要になるでしょう。

まずは現在の保温状態を点検し、劣化箇所や断熱不足のエリアを洗い出してみて下さい。緊急性の高い箇所から優先順位をつけ、段階的な工事計画を立てることで、予算の平準化も図れるはずです。

保温工事は長期的な経済効果を軸に判断すれば、「コスト」ではなく「投資」となります。専門業者と相談して、あなたの建物に最適な保温工事の計画を検討してみて下さい。

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